magpa-使役動詞について
タガログ語の使役動詞(magpa-やipa-, pa-in)を調べてみると、活用はともかく、その用法や意味的傾向の幅広さに驚かされる。
使役と言うと、「誰かに何かをさせる」という、ややもすると強制的なイメージを持つが、実態としては、「お願いする」や「してもらう」、「これこれの状態にする」などのニュアンスも幅広く有している。実際、使役動詞は英語で”causative verbs”, “indirect verbs”などと呼ばれ、より広い視点で捉えられている。
そこで今回は、行為者焦点のmagpa-動詞に着目し、”何かをしてもらう”という意味合いになるわかりやすいパターンを挙げてみる。私を含めて学習者にとっては、まず簡単なところから切り込み、文法上の立ち位置は後から振り返るのが簡単だろう。
具体例
今回は、以下のmagpa-動詞を取り上げてみる。
| magpabili | 買ってもらう |
| magpagupit | 髪を切ってもらう |
| magpalinis | 綺麗にしてもらう(クリーニングなど) |
| magpatingin | みてもらう(医者などに) |
| magpagawa | 作ってもらう |
Nagpabili ako ng tinapay.
パンを(誰かに)買ってもらった。
使役動詞では、指示を発する側(指示者)と、受ける側(被指示者)の2者を通して語幹(bili: 買う)で示される行為や状態が実現される。そしてmagpa-の場合、指示者が焦点となる。
今回の例では、ako(私)が指示者であるが、被指示者は明示されていない。とにかく誰かに買ってもらったことが伝わればよいという場合、それが誰であるかなど明示しなくても良い。タガログ語は、基本的に省エネなのだ。学習者にとっても、まず簡単な表現から慣れていくのが楽だろう。
Nagpabili ako ng tinapay sa kanya.
彼/彼女にパンを買ってもらった(買うようにお願いした)。
被指示者を明示するなら、上のようにsa句で指定する(※自動詞の場合はng句になるが、これはまた別の時に述べたい)。
Nagpabili ako sa anak ko ng atay ng manok kaso wala na sya bilhan.
子どもに鶏のレバーを買うように言ったんだけど、どこにもなかったのよね。
実際にFacebookにあった表現で、実践的だ。kasoは「しかし」、bilhanは「買えるところ」だ。この例から分かるように、使役動詞によって目的の行為が実現したとは限らず、特にkasoやperoを繋ぐことで「できなかった」、「拒否された」といった旨も表現できるのだ。
Kailangang ko nang magpagupit.
そろそろ髪を切らなきゃ(切ってもらわないと)いけないな。
自分で切るのではなく、誰かに切ってもらう、という観点で、使役動詞で表現するわけだ。実際に切る人(被指示者)は、床屋の人でもいいし、誰でもいい。別に明示しなくてもよい点がポイントだ。あえて明示したいなら、やはり、以下のようにsa句(人名ならkay)で指定する。
Nagpagupit ako kay Bob.
Bobに散髪してもらったよ。
こうして見ると、話の中心は、誰かに何かをさせる、というより、誰かに頼んで何かを達成した、という自己目的の実現にある感じがするだろう。使役動詞は英語で”indirect verbs”と呼ぶこともあり、確かにその方がしっくりくる。
Gusto kong magpalinis ng ngipin.
歯のクリーニングを受けたいな。
linisが綺麗、なので、magpalinisで「誰かに綺麗にしてもらう」となるわけだ。動作の対象(ngipin: 歯)はng句で指定する。
もし歯医者に話をしているなら、”ng ngipin”も省略して十分だ。
Gusto ko pong magpalinis.
(歯の)クリーニングをお願いしたいです。
ほかの例を見ていこう。
Magpatingin ka sa doktor.
医者にみてもらいなよ。
Magpapatingin ako sa doktor dahil may masakit sa katawan ko.
体が痛いので、医者にみてもらおうと思います。
日本語でもまさに使役っぽい表現なので、これはわかりやすいだろう。tingin自体は「みる」に近い表現で、magpaを付けることで、みてもらう、判断をあおぐ、といった用法が生まれているわけだ。
他の例もそうだが、magpa-を付けることで生じる具体的な用法を単純なルールで機械的に推測することは、難しいと思われる。だから、個別に習得していけば良い。
Nagpagawa ako ng bagong tshirt kay Bob.
Bobに新しいTシャツを作ってもらったよ。
こういう表現に慣れるには、練習が一番だ。ぜひ、注意して会話を聞き取り、使うように心がけたい。
今回は、magpa-によって他者(被指示者)に何かをお願いするパターンを取り上げた。一方、形としてmagpa-でありながら、被指示者はほぼ受け身になり、指示者の行動が大きなウェイトを占めるパターンも存在する。これについては、また次の時に取り上げてみたい。

コメント