magpa-動詞で仲介行為を表現

自発行為が主役のmagpa動詞

前回、magpa-動詞で他者に何かをしてもらう趣旨を表現できることを述べた。

一方、magpa-動詞によって自分の方が他者に働きかけ、他者は概ね受け身になる表現も存在する。日本語でも、「着せる」と言った場合に自分の働きかけや介助の意味合いが強いのに対し、「着させる」と言った場合は他者にやらせる含みが強くなるのと似ているだろうか(日本語の複雑さもあなどれない)。

今回は、自身(指示者)が積極的に行為にかかわるパターンを取り上げる。

具体例

magpatulog寝かせる
magpakain食べさせる (しばしば、食べ物をあげる形で)
magpahiram貸す
magpaaral学校に行かせる/学費を支える
magpatawad許す/値下げに応じる
magpasalamat感謝する
指示者側の行動が多くを占めるmagpa-動詞

Nagpatulog kami ng mga bata.
私達は子どもたちを寝かせました。

被指示者(子どもたち)を寝る状態にさせた、つまり、寝かせたということになる。あやすように寝かせた場合でも、「寝なさい」と言って指示した場合でも、どちらでもmagpatulogで表現できる。ただ、Googleで使用例を見てみると、前者が圧倒的に多いように思う。

前回、被指示者はsa句で指定したが、寝るのように自動詞、ないしは目的語を持たない場合、ng句で指定するのが自然らしい。

Mahirap na magpatulog ng mga bata.
子どもを寝かせるのは、難しい。

さて、例え自動詞でも被指示者をsa句で表すパターンがある。それは、ang nagpatulog (寝かせた人)のように、指示者を参照式に表した場合である。

Kami ang nagpatulog sa mga bata.
子どもたちを寝かせたのは、私達です
(私達が、子どもたちを寝かせました)

これは、「フィリピノ語文法モジュール」でいう「基本文2」、「Tagalog Causative Verbs」でいう「Relativized Environment (p.23参照)」に相当する。当該ケースでは、自動詞と言えどもsa句、ng句のどちらでも被指示者を指定できるという。はなはだややこしい話だが、パターンが多いわけではないので、覚えてしまえばよいだろう。

さて、今回の被指示者はmga bata(子どもたち)で、「誰か特定人物の子ども」のように意識的に限定しているわけではなかった。一方、意識的に限定したい場合、指示者が焦点のmagpa-動詞ではなく、被指示者焦点(tulogの場合はpa- -in)を使うのが自然な表現らしい。magpa-動詞ではなくなってしまうが、重要なポイントなので説明しておきたい。

Pinatulog namin ang anak nya.
彼/彼女の子を寝かせました。

Ok, ok, papatulugin kita.
大丈夫、私が(君を)寝かせてあげるからね。

第2の例文は、泣きじゃくる子にかけられた表現だ。前回のように他者に何かをやってもらうというより、自発的に介助する、というニュアンスがうかがえるだろう。

tulog以外の例を見ていこう。

Nagpakain sila ng mga bata.
彼らは子どもたちに食べさせてあげました。

往々にして、食べ物自体も提供する意味合いを含むことが多いようだ。

Ayaw kong magpahiram ng pera ngayon.
今、お金を貸したくないんです。

hiramは「借りる」、これが他者に「借りさせる」、すなわち「貸す」となるわけだ。

Si Bob ang nagpapaaral kay Alice.
Aliceの学費を支えているのは、Bobです。

「勉強させる」が転じて「学費を支える」という意味を帯びる。このように、使役という観点では捉えきれないニュアンスがあることに注意したい。ややイディオムっぽいので、個別に覚えよう。

使役らしくないmagpa-動詞

語頭にmagpa-が付いていても、もはや使役という構図がほとんど感じられないものも存在する。もはや、完全にイディオムととらえてよいだろう。

Kailangang magpatawad sa mga tao na nakakasala.
罪のある人も、許さないといけません。

magpatawadには、許す、または値下げに応じるの2つの意味がある。どちらであるかは、文脈で判断できるだろう。被指示者は完全に受け身となる、完全に一方的な行為であり、使役の要素が感じられない。

Magpasalamat kayo.
感謝しなさい。

感謝するも、magpa-動詞で表現する。なぜ使役を示唆するmagpa-で、全くもって使役らしくない意味が形成されるのか。その答えを知るのは、難しい。歴史的に言葉の意味や用法が変性して、摩耗していった結果と見るしかない(Tagalog Causative Verbsのp.39参照)。

今回は、magpa-動詞で「自身が積極的に関与する」パターンを挙げた。この他にも、「意図的に、あえて〜しようとする」といったニュアンスで使われることもある。使役動詞は英語でIndirect Verbsと呼ばれることもあり、本来に幅が広い! 機会があれば、こうした残りのパターンについても取り上げてみたい。

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